2009年07月27日
DPCで病院が淘汰されることを真摯に直視した議論を――日本病院学会
7月23日、24日に熊本市で日本病院学会が開催されました。学会長は、国立病院機構熊本医療センター名誉院長の宮崎久義先生です。
さて、金曜日には、ランチョンセミナーで渡辺が座長を務めさせていただき、特別企画としてあきよしかわが講演をさせていただきました。
まず、ランチョンセミナーでは、「一見強面で、最初に先生の前でプレゼンをさせていただいたときには、思わず小指があるかどうか確認してしまいましたが…」という渡辺からの紹介を受けて、「DPC環境下のがん医療を考える がん医療の質向上に向けてDPCデータの活用」というタイトルで、千葉県がんセンター・前センター長の竜崇正先生がご講演。
千葉県がんセンターでは、「診療の現場から、いい診療を行いながら経営改革ができないか?」という考えの下に、経営戦略部部長にあえて医師を置き、「(スタッフが)やりたい医療を効率的に行うことで、患者さんが集まり、結果的に経営もよくなる」という医療の質と経営の質の両立を図ってきたそうです。具体的には、クリティカルパスの運用、手術枠をなくして毎日手術・毎日外来の手術中心の診療体制にシフトしたことなどを紹介してくださいました。
さらに、DPCデータを活用して医療の質向上を図る取り組みとして、5つのがんセンターによるCQI研究会(The study for cancer quality initiative)、千葉県内の医療機関による千葉県CQI研究会を紹介。術前・術後日数や在院日数分布、食事開始時期など、実際に行ってきたベンチマーク分析の結果を紹介しつつ、どのようにデータを検証してきたのかを説明されました。
そして最後に、地域医療連携室の改革について紹介。竜先生自身、地域の医療機関を回ったほか、地域医療連携室のメンバーには「地域連携マネジャー」としての自覚を持って活動してもらい、地域連携に注力されてきたそうです。2007年から順次、地域連携パスの導入を開始し、すでに14種類のパスを運用。竜先生は、地域連携パスは「地域医療連携の質を患者さんに保証するためのツール」と話します。というのは、①ガイドラインやエビデンスに基づいて標準化された共同診療計画であり、②参加施設の要件を設定した上で役割分担を図っていて、③勉強会等を行うことで地域全体の医療レベルの向上につながるからです。
一方、特別企画では、日本病院会副会長の宮崎忠昭先生(長野赤十字病院名誉院長)の座長の下、アキよしかわが「日本の病院の新しい姿とは?将来のビジョンと戦略」というタイトルで講演をさせていただきました。
まず、DPC環境下にある日本の病院にとって非常に参考になる前例として、DRGによってアメリカの病院はどのように変わったのかを説明。アメリカでは、5つに1つ程度の病院が淘汰され、さらに生き残った病院も、多くが規模を縮小しました。たとえば、メイヨークリニックでは、あわせて2000床あった2つの基幹病院のうち1つを完全に外来にシフトし、残りの1つも850床に減らしました。
一方、日本は、諸外国に比べてアウトライヤー的に病床数が多いことは周知のとおりです。
こうした米国での状況をみてきたよしかわは、日本でも同様に、「DPCによって病院は淘汰されるであろう」ということをあえて強調させていただきました。解雇のことを「リストラ」、売春のことを「援助交際」という言葉でぼかすように、日本ではあえて曖昧な表現を使うことがありますが、「現実を直視しなければいけない」というのがよしかわの考えです。そして、淘汰は避けられない現象であって、病院が淘汰されても医師が減るわけではなく、医師はどこかに集まります。「政策決定者は、DPCによって病院が淘汰されることを国民に、医療界に説明し、その受け皿をどのようにつくっていくのかを考えながらDPCを進めていかなければ日本の医療供給システムは危機に直面するのではないでしょうか」と、厳しい意見を述べさせていただきました。
さて、後半では「厳しい環境化の中で個々の病院はどのようなアクションをとるべきか?」の答えとして、実際の病院のデータも示しつつ、次のようなヒントを伝えました。
①手術件数を増やすこと
②コストを把握し、導入資源をコントロールすること
③アウトカムマネジメントを行うこと
—–
広報部 |
|
事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。
|