2009年10月19日
DPCで肝がん治療は変わったか?――JDDW2009
14日(水)から17日(土)にかけて、
第17回日本消化器関連学会週間(JDDW)が京都市で開催されました。これは、日本消化器病学会や日本肝臓学会といった複数の学会によって合同開催される消化器病関係最大規模のものです。
初日14日の9時から12時までの3時間に渡って行われたワークショップ「DPC時代における肝細胞癌治療戦略」では、GHCも相馬、芦田、濱野、近藤、根本による特別チームを編成して、分析、発表のお手伝いをさせていただきました。
このワークショップでは、まず、司会の大垣市民病院の熊田卓先生、東京大学の椎名秀一朗先生からDPCの概要に関する説明があり、その後、日本の肝細胞癌治療をリードする11病院から、それぞれ肝切除、塞栓療法、ラジオ波治療といったDPC環境下での肝細胞癌治療戦略について発表。そして、11病院の先生方が一同前方の座席に集まって討議が行われ、最後は、東京医大茨城医療センターの松崎靖司先生により特別発言として総括いただくという流れでした。
このワークショップではアンサーパッドを利用して会場の参加者へアンケートを実施し、リアルタイムで結果をスクリーンに反映させるという形式を採用。このアンサーパッドを使った結果、「DPCを意識して診療している」人は、会場の8割以上ということがわかりました。
11病院の先生方から行われた報告は下記のとおりです。
大森赤十字病院:中規模市中病院の肝細胞癌に対する治療戦略
東京医科大学病院:肝細胞癌治療におけるSonazoid造影超音波の役割とDPCへ与える影響
北里大学病院:一般病院と特定機能病院の肝癌治療収支実態の比較
南風病院:DPC時代における医療の質、費用対効果を踏まえた当院の肝細胞癌診療戦略の試み
市立池田病院:DPCに対応したクリティカルパス-肝細胞癌における検討
済生会新潟第2病院:DPC時代における肝細胞癌に対する効率的な内科的治療戦略
大垣市民病院:DPC時代の肝細胞癌肝切除
県立広島病院:DPC時代の肝細胞癌治療戦略
東大病院:当院でのDPC導入後のラジオ波焼灼療法(RFA)における治療戦略
名古屋市立大学病院:当院におけるDPC導入前後の肝細胞癌の治療戦略の検討
千葉大病院:DPC時代の肝動脈塞栓併用ラジオ波熱焼灼療法の意義
各先生方の発表後の討議では、椎名先生、熊田先生の司会の下、肝がん治療の状況についてGHCのベンチマーク分析結果をもとに紹介。さらに、アンサーパッドで会場にアンケートを行い、その結果を見た後に、事前にGHCのデータを用いて行った全国の病院のベンチマーク分析結果、発表された11病院のベンチマーク分析結果を紹介するという流れで進行しました。
このうち、一部の結果を紹介します。
Q TACE治療後に抗生剤の予防投与をしますか?
①手術中、手術後に1日のみ 34%
②ある程度解熱するまで 52%
③広範囲に塞栓した症例のみ 0%
④しない 14%
◎GHCのベンチマーク分析結果(全国85病院) 平均投与日数=4.7日
Q ラジオ波治療の効果判定の造影CTなどは入院期間中に行いますか?
①1回は入院期間中(2回目以降は外来) 50%
②治療効果判定が終了するまで入院中 37%
③外来 13%
◎GHCのベンチマーク分析結果(全国85病院)
術後CTの入院期間中実施:68.6%、未実施:31.4%
Q DPC導入病院対象:RFA(ラジオ波治療)の標準治療パスを採用していますか?
①採用している 60%
②採用していない 33%
③関与していないのでわからない 7%
このほか、「DPCによって医療の質は向上しましたか?」という設問では、「向上した」が29%、「低下した」が21%、「変わらない」が50%と、DPCデータを医療の質の改善にうまく活用できていない状況も浮き彫りになりました。
そして、討議の中から、肝癌ラジオ波治療において、患者さんの状況によって複数回の処置を要する状況であっても、追加でかかったコストは病院の持ち出しとなるといった現行のDPC制度上における不備についても言及がなされました。
最後に総括の松崎先生から、「臨床現場で、正しい医療行為を正しく行えるよう、当学会を通して訴えていくことで、みんなで力を合わせてより良い医療環境を目指していこう」という熱いお話があり、熱気を帯びた会は終了となりました。
ワークショップは、全国の病院や発表病院のベンチマーク分析結果を織り交ぜつつ、参加者にもアンサーパッドで参加してもらうという画期的なスタイルで、参加者を飽きさせない、非常に有意義な内容でした。このような画期的な取り組みに参加させていただき、GHCとしても嬉しい限りです。
広報部 |
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