2010年01月04日
「かわいそう」と思った時点でクラウンではない
有限会社プレジャー企画 代表取締役、NPO法人日本ホスピタル・クラウン協会 理事長
大棟耕介 氏
派手なメイクに真っ赤な鼻をつけて、カラフルな衣装を着て、周りを楽しませる人。
職業は、「クラウン」。
日本では「ピエロ」という呼び方で覚えている人も多いかもしれませんが、実はピエロは芝居の道化役の役柄。本来は、クラウンが正式名称です。
そして最近、小児病棟を中心に、クラウンにベッドサイドでパフォーマンスを行ってもらう、「ホスピタル・クラウン」を導入する病院も増えています。NPO日本ホスピタル・クラウン協会の理事長であり、クラウンのみのパフォーマンス集団「プレジャーB」を率いる大棟耕介さんに話を聞きました。2回に分けて、お届けします。
――なぜ、クラウンという職業をめざされたのですか?もともとは自己啓発のために始めたんです。大学を卒業して入社した鉄道会社で生き残っていくために、カルチャースクールで習い始めたのがきっかけなんですよ(笑)。ジャグリングにしても、マジックにしても大体イメージはつくし、やればそこそこできるじゃないですか。でも、クラウンって、絶対に恥ずかしいし、一番できなそうだなと思って、始めたんです。そしたら、扉を開けたら、また扉が見つかって…という繰り返しで、いつのまにか、今につながっている感じですね。
講座を受け始めた翌年に、そこで出会った仲間らとクラウンファミリー「プレジャーB」を結成して、その3年後には鉄道会社を辞めて、会社組織にしてしまいました。
――ホスピタル・クラウンの活動は、2004年ころから始められたのですよね。クラウンとして活動し始めた当初から、活動拠点の一つとして病院には行っていましたが、その頃は夏祭りやクリスマスパーティなどのイベントのときに呼ばれてエントランスやプレイルームで1、2時間パフォーマンスを行って帰るというスタイルでした。現在のように病院に定期的に通って、ベッドサイドでコミュニケーションをとりながらパフォーマンスをするという、ホスピタル・クラウンの活動は、まだ4、5年ですね。
――クラウンとホスピタル・クラウンでは、求められるものが違うのでしょうか?ホスピタル・クラウンのほうが高いスキルが求められると考えています。ホスピタル・クラウンの活動がメディアなどで取り上げていただけるようになってから、「ホスピタル・クラウンになりたい」と活動に興味を持ってくださる方も増えたのですが、なかには考えが甘い方も結構いるんですね。スキルがなくても大丈夫、と…。でも僕は、ホスピタル・クラウンになる前に、クラウンになってほしいわけです。
というのは、ホスピタル・クラウンはプロ級のスキルが必要だと思っているので。狭い空間で、大きな道具が使えないなかで、相手とコミュニケーションをとりながらパフォーマンスを行わなければならないので、即興性が求められます。経験がなければつらい。
そして一歩間違うと、上から目線の押し付けが起こってしまう。「かわいそうな子どもたちにがんばってもらおう」という。「かわいそう」と思った時点で、クラウンではなくなってしまいます。「かわいそう」と思うのは、親や友達、つまり人間の気持ち。でも、クラウンは人間ではないんです。
~後半に続く~
広報部 |
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。
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