2010年02月17日
DPCデータを駆使して超急性期病院に――福岡済生会総合病院・岡留院長【後編】
月曜日に引き続き、社会福祉法人恩賜財団済生会済生会福岡総合病院院長 岡留健一郎先生のインタビュー記事後編です。
――共通の価値観は、地域連携の取り組みにもあらわれていますよね。紹介患者を紹介基に戻すことを「返患」、新規に患者を地域の医療機関に紹介することを「逆紹介」と分けて、特に返患を徹底しているとうかがいました。今、返患率は、88%程度です。残りの1割強は、ご家族が他の医療機関を希望されている、機能的に戻すことが難しいなど、何らかの事情で元も先生に戻すことができないケース。そして、別の医療機関に紹介する場合には、必ず紹介元の先生に事前に連絡するよう、徹底しています。これは、医局会で口をすっぱくして何度もいいましたので。
皆さん、「僕の送った患者さんはどうなったかな」と、知りたがるんですよ。説明もなく(紹介した患者が)一人戻ってこないと、その後、10人は紹介してくれませんね。それだけ重要ということです。
――返患率の高さは、先生のお考えが浸透している表れですね。副院長を務めていた5年の間にアイディアを出して、「こういう病院にしたい」ということを考えていました。院内LANを整備したのも、具合の悪い患者さんに立たせて職員が座っているのはおかしいと考えて、受付スタッフが立って対応するようにしたのも、私が院長になってからです。
今、院長になって13年目になりました。ようやくベースができてきたので、これからは「発展」だと考えています。人材育成。そして、DPCデータを駆使しながら、超急性期病院として発展していきたいです。手術室をもっと改善したいですし、エビデンスに基づいた医療を行うことが大事です。そして標準化と無駄の排除を進める。経験とコツの医療はもう古い。
また、人材育成においては、臨床研修指導医を増やすことも大切ですし、DPCデータを活用する上で特に大事な医事課や診療情報管理士をさらに育てていきたいと思っています。院内で彼らが活躍できるよう、東京などで開かれるリーダー研修や経営塾に参加させたりしています。
皆、やる気はあるんです。ただ、縦割り社会や年功序列制度など、皆のやる気を阻害するファクターがあるので、それらを取っ払っていかなければいけません。だから、私は年齢も職種も関係なく、いい人がいればどんどん活躍してもらうという、抜擢主義です。
――先生は医師には医局会で直接話しをするとのことでしたが、他のコメディカルとも直接話す機会を設けていらっしゃるんですか?気軽に話しかけるようにしていますし、やはりダイレクトに話す場を持つようにしています。「俺は院長だ」という態度ではダメ。事務的な問題であれば事務長に相談してもらえばいいですが、何か本質的な問題があればストレートに私に伝えてほしいと皆には言っています。人を介せば、真ん中に入った人のバイアスがかかりますので、大事な問題はダイレクトにいってもらうのが一番です。
――ただ、その分、先生にかかる労力は大きいですよね。先生ご自身はどのようにモチベーションを保っていらっしゃるんですか。今、病院には800人近くの職員がいます。家族を含めると、2500人くらいの生活がかかっているわけです。彼らを路頭に迷わせたらいけませんので、そのことを常に念頭において、経営の舵取りをしています。トップとしての責任ですね。
私は高校時代、文系に進みたかったんですよ。ところがだんだん、物理や化学といった理系科目が面白くなってきて、成績も上がってきた。それで先生から「医学部を受けてみないか?」といわれて、受けたんです。「医者になるんだ!」「病気を治したい」と意気込んで医学部を目指したわけではなくて、たまたま変わっていった。でも、だからこそ、人材育成やマネジメントに興味があるのかもしれません。自分の考え方には、そういう文系の要素が入っているので、経営を行う上ではよかったのかもしれませんね。
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。
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