2010年03月01日
がん医療の質向上をめざしたCancer Quality Initiative研究会、参加病院拡大
27日(土)、第5回CQI研究会の会合が開かれました。CQIは、Cancer Quality Initiativeの略。2007年に、千葉県がんセンター、神奈川県立がんセンター、栃木県立がんセンター、愛知県がんセンター、四国がんセンターの5病院が集まってスタートした研究会で、“施設名をオープンにした上”で、ベンチマーク分析を行っています。研究会の目的は、“均てん化を目指し、全国のがん医療の質を向上する”こと。グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンでは、データの分析や研究会開催のお手伝いをしています。
第5回に当たる今回は、午前中に世話人会として前述の5病院+岩手県立中央病院での会合を、午後に「拡大CQI」と称して、CQI研究会の趣旨と“施設名開示”条件に賛同された病院を交え、会合を開きました。
まず、午前の世話人会では、2007年、2008年、2009年の経年データを見ていきました。6病院の中では、「DPCデータ」に「外来データ」や「院内がん登録データ」を付加し、より臨床の実態に近く意義のある分析を追求しています。それぞれの病院で、在院日数が短縮され、治療内容についても症例ごとのバラつきが少なくなり、標準化されていたりと、年々、大きな変化が見られます。
研究会発足から3年。ベンチマーク分析の結果を自院に持ち帰ってフィードバックし、現場にいかすという繰り返しによって、確実に改善が行われているなか、6病院からは、今後に向けた新たな議論が繰り広げられました。
「診療のスリム化というだけではなく、治療の質を測っていかなければいけない」
「相互のパスをオープンにして検証していくといいのでは?」
「パスそのものの比較というよりも、イベントごとの比較がいいかもしれない」
「DPCで包括される部分のみではなく、手術中の医療資源の使用状況など、出来高部分の検証も興味深い」
「(医療資源を)ただ減らすという議論ではなく、やらなければならないことが見えてくる」
一方、午後の拡大CQIでは、31病院が新たに参加を表明され、世話人の6病院を加えた37病院でのベンチマーク結果を元に、岩手県立中央病院の望月泉副院長、栃木県立がんセンターの清水秀昭院長、GHC相馬から胃がん、乳がん、大腸がん、肺がんの4つのがん腫について、発表が行われました。
(当日のプログラムは、
こちらよりダウンロードいただけます)
各がん種とも、診療内容の内訳や手術術式の内訳、在院日数、術前術後日数、術前処置の実施状況から、周術期抗生物質製剤の選択状況・投与日数、食事開始やドレーン留置といった術後の内容などまで、さまざまな角度から病院間で比較。すべての分析結果は、37病院すべての施設名を明らかにしたグラフ化しています。参加された方々はやはり自病院のポジションが気になる様子で、身を乗り出してご覧になっていました。
また、発表ごとに設けた質疑応答の時間には、「当院ではパスを設定して、術後点滴を2日以上は投与していないと思うのですが…」「実施率が50%程度の病院ではどのような基準で決めているのでしょうか」など、具体的な質問が飛び交いました。
最後のパネルディスカッションでは、千葉県がんセンター浜野公明先生の司会の下、神奈川県立がんセンター・三浦猛先生、栃木県立がんセンター・清水秀昭先生、愛知県がんセンター中央病院・篠田雅幸先生、四国がんセンター・吉田功先生、GHC相馬がパネラーとして登壇。
実名でのベンチマーク分析を始めた当初は抵抗があったものの、相互に実状をオープンにすることで改善に結びついたこと、他院の実状を聞くことがいかに重要かということなど、これまでの経験をもとに率直に話してくださいました。また、GHC相馬からは、DPCデータに外来データや院内がん登録のデータなどをマッチングさせて分析を行う上で、現状では、データの精度に差があるため、今後はステージ情報をはじめ、分析に必須なデータから整備していくことが必要との意見を伝えました。
「日本のがん医療の質を底上げしよう」という志を持った5病院で始まったCQI。今回の会合を機に、CQIの志を共有してくださり、「がん医療の質の底上げを!」という渦がさらに拡大していくことを願っています。
第6回CQI研究会は8月または9月に開催予定です。場所は、愛知県がんセンター。全国のがん診療連携拠点病院の皆様、次回のCQI研究会へのご参加をお待ちしております!
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広報部 |
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。
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