GHCブログ

2010年03月08日

10対1でも急性期看護補助体制加算を算定すれば十分か!?――じほう社・診療報酬改定セミナー

日曜日、じほう社主催の診療報酬改定セミナー「ベールを脱いだ民主政権下の医療改革 2010年改定の核心を衝く」に参加してきました。

当日のプログラムは下記のとおりです。

○第1部:基調講演 2010(平成22)年度診療報酬改定の概要    厚生労働省保険局医療課長補佐 石井安彦氏

○第2部:シンポジウム 2010(平成22)年度 診療報酬改定と医業経営の将来像   ●22年度DPCの改定概要―これからの医療の方向性―    日本病院団体協議会議長/東邦大学医療センター大森病院心臓血管外科部長 小山信彌氏   ●平成22年診療報酬改定と病院運営    日本病院団体協議会診療報酬実務者会議委員長/寿康会病院理事長 猪口雄二氏   ●2010年改定と今後の医療経営    MMオフィス代表取締役 工藤高氏   ●パネルディスカッション

厚労省石井氏は、診療報酬改定の全貌について、2008年度と施設基準が変わった項目、新設された項目、新たに届出が必要な項目を中心に説明しました。 具体的な内容については、厚労省がホームページに公開している資料と同様でしたので、こちらをご参照いただければ。さらに、診療報酬改定説明会の動画もYou Tube上にアップされています。

□厚生労働省:平成22年度診療報酬改定についてhttp://www.mhlw.go.jp/bunya/iryouhoken/iryouhoken12/index.html

□平成22年度診療報酬改定説明会(2010/03/05)http://www.youtube.com/view_play_list?p=046430350D0DAACF


小山先生

DPC評価分科会の委員でもある小山氏の講演は、診療報酬改定のなかでも、特にDPCに焦点を当てたもの。今回のDPC改定で見直されたのは、①入退出ルールの策定、②診断群分類点数表の見直し、③包括範囲の見直し、④新たな機能評価係数の提案――の大きく4つ。 このうち、診断群分類点数表の見直しに関しては、現在、引き続き検討が行われている高額薬剤による分岐の追加、化学療法レジメンによる分岐の追加について、「(DPC評価分科会で)今、頭を悩ませている問題。精緻化を進めれば進めるほど、出来高に近くなる」と、もどかしい心境をもらしました。

新たな機能評価係数の導入及び調整係数の段階的廃止の概念図(案)

また、新たな機能評価係数に関しては、12月16日の中医協基本問題小委員会の配布資料に掲載されていた「新たな機能評価係数の導入及び調整係数の段階的廃止の概念図(案)」を提示した上で、6年後の平成28年度改定時に設定される「基礎係数(仮称)」に注目。 「10年も前のデータを参考に係数をするわけはないだろうから、直近のデータを使うだろう」と指摘した上で、今、必要な検査を積極的に行うことが基礎係数を設定する際にいきるのでは、との見解を述べました。


猪口先生

猪口氏の講演は、診療報酬改定の内容を病院経営者の視点から、診療所、療養病床、精神科、回復期リハビリテーション病棟、亜急性期病棟、そして中小病院、大規模病院と、機能別に整理した内容でした。 講演の最後、「今回の改定は、大病院をはじめとした地域の基幹病院にとっては明らかにプラス。ただ、中小病院でもその気になれば算定できる項目は少なくない」と、同じ立場の病院経営者にエールを送りました。


工藤師匠

最後の工藤師匠は、講演の冒頭、「改定で評価される病院、されない病院」として、次のことを提示。

○評価されるのは? 救急入院患者が多い/24時間体制で手術/重症患者と手術件数が多い/早期退院・早期治癒/後方病院、診療所、介護関連施設としっかり連携/他職種協働でチーム医療 ○評価されないのは? 100床前後のケアミックスで、一般病棟は看護配置15対1/医療区分2、3の患者割合が低い療養病棟(看護配置25対1)

この根拠として、急性期(DPC)病院、回復期・亜急性期、療養病棟、無床診療所と機能別に経営シミュレーションを交えながら、改定の内容を紹介しました。

最後のパネルディスカッションでは、小山氏の司会の下、石井氏、猪口氏、工藤師匠が登壇。会場からの質問に回答する形式で、ディスカッションが行われました。

今回、7対1、10対1病棟に新設される「急性期看護補助体制加算」に関連して、「無理をして7対1を取得するよりは、10対1のままで急性期看護補助体制加算を算定したほうがいいのでは…」という意見に対して、猪口先生、工藤師匠から下記のようなコメントがありました。

猪口先生 「どこの病院も7対1を守るのに必死ですから、10対1で補助加算を算定するほうが、運営が安定するということもあり得るでしょう。ただ、7対1を安定的に取得できるのであれば、より良いとは思います」

工藤師匠 「単に人件費というコスト優先のみで考えれば、10対1ですね。でも、急性期としての看護の質担保と新卒看護師のリクルートを考えたら、7対1でないと優位性は保てないと思います」

また、今回の診療報酬改定で、正当な理由がある医療機関以外は、明細書付きの領収書を無料で発行することが義務化されました。これに対して、会場から「いずれは全医療機関に義務化されると考えるべきでしょうか?」と質問がありました。

これに対し、厚労省の石井氏は、「中医協の議論では、全医療機関において義務化することで合意を得ています。あとは時期の問題で、将来的にすべての患者さんに明細書を発行するという流れになっています」と回答しました。

パネルディスカッション

広報部
広報部

事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。