2010年03月27日
2010年度診療報酬改定直前セミナー「DPC4度目の診療報酬改定、そして明日へ向かう病院」開催
「DPC4度目の診療報酬改定、そして明日へ向かう病院」と題して、診療報酬改定に関するセミナーを開催しました。
トップバッターとして講演をさせていただいたのは、GHC米国代表のアキよしかわ。グローバルヘルスコンサルティングの説明を行った後、コスト分析の重要性と現行の制度が抱える矛盾について、DPCコスト分析システム「コストマトリックス」を使った分析事例とともにお話させていただきました。DPCコードのなかには、在院日数が長くなるほど、出来高収入と比較して増収になるケースがあります。しかし、こういったもののなかには、コスト分析を行うと、増収になるとはいっても赤字傾向になるものもあるのです。さらに、在院日数の長短にかかわらず、医療機関別係数の高い病院では黒字になり、係数が低い場合には赤字になるというコードもあります。この場合、在院日数を短くしようというインセンティブは働きません。
こうした結果を踏まえて、「コストを把握した上で診療報酬を設定するという努力を行わなければ日本の医療はうまくいかないのではないか。診療報酬とはあくまでも公的な価格であり、投資した時間、エネルギー、資源に対して公平なリターンがなければいけないだろう」と、見解を示しました。
続いて登壇したのが、MMオフィスの代表取締役でGHCのエグゼクティブアドバイザーでもある工藤高師匠(GHC内では「お師匠」と呼ばせていただいています)。この時期、全国を飛び回って講演を行っている師匠の説明は、とてもわかりやすく、参加されていた先生方からも好評でした。さすが、お師匠。
2010年度の診療報酬改定について、個別の項目の説明とともに、全体のポイントをいくつか紹介してくださいました。一つが、「多職種協働(スキルミクス)の評価」。
2008年度の診療報酬改定でも連携、チーム医療は評価されていました。今回の改定でもその傾向は顕著です。たとえば、医師が医師にしかできない仕事により専念できるように設けられた「医師事務作業補助体制加算」。2010年度改定では、15対1、20対1というより手厚い人員配置を評価する新たな枠組みを設けました(※年間の緊急入院患者数が800人以上といった施設基準あり)。
また、看護師が専門業務により専念できるように、新設されたのが「急性期看護補助体制加算」。このほか、「栄養サポートチーム加算」や「呼吸ケアチーム加算」などもまさにスキルミクスを評価した項目です。
ただし、医師事務作業補助体制加算にしても、急性期看護補助体制加算にしても、もしスタッフを増員するとなればその分のコストがかかります。そしてその分のコストを加算による点数増でカバーできるかというと、そうとも限りません。
しかし、お師匠が指摘するのは、「木を見て森も見る」こと。個々の点数配分にエビデンスがあるわけではなく、個別の点数による採算性のみではなく、俯瞰して考えることの必要性を説かれました。
社会医療法人財団慈泉会相澤病院理事長・院長の相澤孝夫先生は、冒頭、今回の改定に対して先生が抱いた印象について「たくさんのスタッフがいなければ取れない点数が多い。しかも、研修を受けたり、認定を受けたりと質の高いスタッフを揃えなければいけないということが最初に感じたこと。もう一つは、自分たちの病院がどんなポジションでいくのかを明確にする、つまり、持っている資源をどこに集中投下するのかを明確にしなければいけないと気づきました」と語ってくださいました。加えて、「調整係数によって何とかやっていけていた病院は非常に苦しい思いをするのではないでしょうか。DPC病院のなかでもかなりの格差がでるのではないかなと思いました」と見解を述べられました。
そして、改定の概要について病院経営者の視点から説明してくださった後、まとめとして語ってくださったのが「ミッションやビジョンをゼロベースで見直し、それらを実践するための『しくみ』『しかけ』をつくることが必要」ということ。ミッション、ビジョンが経営に必要であることはいうまでもありません。しかし、ミッション、ビジョンを掲げたら経営がうまくいくという話ではありません。
「ビジョンがなければどうしようもない、ビジョンだけでもどうしようもない」という相澤先生の言葉は、まさにそのことを実践している方だけに、非常に印象的でした。
最後に講演を行ったGHC代表の渡辺からは、「2010年度診療報酬改定インパクトシミュレーション」と題して、前半はDPC関連の改定内容について、コード設計や点数の変化と病院経営への影響を紹介しました。そして、後半は診療報酬改定全体について、①医療機能、②多職種協働、負担軽減、③充実が求められる領域の医療推進、④地域医療連携――という4つのポイントのうち前半3つに関して、実際のデータを用いたベンチマーク分析を交えつつ、説明させていただきました。
講演の最後、「診療報酬改定で追い風を受ける病院」として提示させていただいた特徴は、下記4つです。
①公益性の高い医療を提供している病院
②急性期病院らしい(難易度の高い手術が多い)病院
③医療スタッフを充実させている病院
④チーム医療を重視している病院
⑤地域連携に注力している病院
この日は300名近くの方が参加してくださいました。そして、参加された方からは、「やるべきことが明確になりました」「いくつか診療報酬改定関連のセミナーに参加しましたが、今日の内容が一番わかりやすかったです」といったうれしい感想をいただきました。
お集まりくださった皆様、ありがとうございました。
広報部 |
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。
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