2010年04月14日
診療報酬はコスト分析に基づいているのか?――メディカルコンソーシアム定例研究会
NTT東日本関東病院にて、メディカルコンソーシアム主催の定例研究会が開催され、米国グローバルヘルス財団理事長のアキよしかわが講演を行いました。
なんと、この会、第195回目とのこと。活動は19年間続いているそうです。
「DPC環境下、日本の病院はどうなるのであろうか」
これが今回の講演のテーマです。
今月9日に厚生労働省から発表された「医療施設動態調査(平成22年1月末概数)」によると、日本には今、8,724の病院があります。
一方、DRGによる病院の淘汰が起こる前の1980年、アメリカの病院数は6,965病院でした。これが、2004年には5,759病院にまで減少したのです。
では、日本のDPCではどのような現象が起こっている、あるいは起こるのでしょうか。
DRGほどではありませんが、DPCも在院日数短縮のインセンティブを持ちます。
在院日数の短縮とともに起こるのが、稼働率の低下。そのため、集患力のある病院と患者を集められない病院とで大きく状況が分かれます。一方、DPCを導入していない病院でも、周囲のDPC病院が病床回転率を上げ、地域のブランド病院に患者がより集まる傾向にあるなか、DPCによる余波を大きく受けます。
こうしたなか各病院が取るべき対策について、よしかわは「コストを把握することが必須」と説きます。今回の講演では、コスト分析の重要性、DPCデータでの限界、病院間の競争、そして技術革新が医療費に与える影響について述べさせていただきました。
講演後の質疑応答では、コスト分析をめぐって貴重なご意見をいただきました。
「現在の診療報酬がコスト分析に基づいていないとのことですが、国は行う気はあるのでしょうか」という参加者からのご質問に対し、よしかわは「おそらく難しいでしょう」と回答。さらに、アメリカでの経験をご紹介させていただきました。
「アメリカでは、DRGの導入が導入された80年代に大掛かりなコスト分析が行われました。というのは、診療情報に関する情報と同時に、医師や看護師の人件費、材料購入データなどをコストに関するデータを大量に収集し、20~30の大学、組織にデータを提供し、分析を競わせたのです。ハーバード、プリンストン、イエール、スタンフォード、MIT、バークレーなど多くの大学の大勢の学者にデータを提供し、実証的な分析を競って行わせることで、米国では実証的な医療分析の実績と経験を蓄積することができ、そして何よりも私を含めて多くの若い研究者を育てることができました。日本の分析は、誰がどこでどのように行っているのかが全く見えません。もっと広く分け隔てなく、学者に競わせて分析させなければ、日本では研究者が育ちません。私は、現在の日本は学問的にも政策的にも医療分析の後進国だと思っています」
北海道から沖縄まで全国からお集まりくださった皆様、本当にありがとうございました。
広報部 |
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。
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