2010年05月17日
シリーズ:アメリカの医療は悪いのか? 第2回:雇用があっても無保険者
毎週金曜日に…と銘打ってはじめたこのシリーズですが、連休も挟み、だいぶご無沙汰してしまいました。国際医療経済学者・アキよしかわによるレクチャーコラム第2回目です。
さて、前回は、アメリカと日本の医療事情の基本的な比較を行いました。
今回は、アメリカの医療保険について紹介します。
まずアメリカにおける医療保険の加入状況をみてみましょう。
□メディケア …14%
□メディケイド/SCHIP …13%
□雇用者による民間保険 …51%
□個人が購入した民間保険 …5%
□軍関連 …1%
□無保険者 …16%
このうち、メディケアとは、1965年に始まった高齢者(65歳以上)を対象とした政府による保険。メディケイドは低所得者層を対象とした公的保険で、SCHIPは低所得者層の子どもを対象とした公的保険です。
上記のなかで問題となっているのは、やはり「無保険者」層が増えているということ。みなさんも、アメリカといえば、「医療も自己責任でまかなわれていて、無保険者が多い」というイメージをお持ちではないでしょうか。保険に入っていない人は、年々、増加傾向にあり、2006年現在で、約4,700万人にも達しているといわれています。
どのような人が無保険者かというと、人種別に見ると、白人系は無保険者は10人に1人ほどと低いのですが、アフリカ系では10人に2人、そしてヒスパニック系では10人中3人以上が無保険と、人種によって大きな偏りがあります。
では、無保険者は失業者なのでしょうか? 雇用状況別に見ると、失業者の26%が無保険者ですが、パートタイムで雇用されている人でも23%が無保険者、そしてフルタイムで雇用されている人でも18%が無保険者なのです。雇用されているにもかかわらず無保険者である多くは、規模の小さい中小企業によって雇用されている従業員です。米国と対比することによって、日本の国民皆保険制度が自営業者をカバーする国保、そして中小企業の従業員をカバーする政府管掌保険によって実現されていることがよくわかります。
そして、このような無保険者の多くは低所得者です。年収2万5千ドル未満では実に4人に1人が無保険です。しかし同時に、年収7万5千ドル以上の高額所得者でも10人に1人が無保険者というのが、アメリカ社会の二面性を現しているともいえます。
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