2010年05月25日
慶應義塾大学大学院にて渡辺がレクチャーさせていただきました
銀色の球体のオブジェ、通称「銀玉」がある東急東横線日吉駅。渡辺が○○年前に通っていた慶應義塾大学がある駅です(「○○」は文字化けでも、誤字でもありません)。
「大学生って若いな」と思ってしまうのは、それだけ年齢を重ねたということでしょうか。
さて、心地よい午後の陽射しのなか、日吉キャンパスに向かっているのは、
KBS(慶應義塾大学大学院経営管理研究科)のヘルスケアマネジメント科目で1コマ、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン代表の渡辺がレクチャーを担当させていただくことになったからです。
このシリーズは、田中滋先生が担当されている科目で、毎回、異なるテーマを設けて、そのテーマにあった講師を外部から呼んで進めているものだそうです。
渡辺がレクチャーをさせていただいたセッションのテーマは、「情報マネジメント」。
前半は、電子カルテを中心とした医療ITについて、後半は渡辺のレクチャーも含めて、DPCデータを用いたデータマネジメントについてディスカッションが行われました。
渡辺のレクチャーでは、DPCを始めとした院内にあるデータを活用してどのようなことが見えるのか、そして見える化によって診療、院内の業務がどう変わるのか、といったことをお話させていただきました。
レクチャーを受けたディスカッションでは、受講者の方々からさまざまなご質問をいただきましたので、一部を紹介します。
質問:ベンチマークの結果、多数に引っばられ、多くの人がいっせいに間違ってしまうことはないのでしょうか?
渡辺:まずはエビデンスがあるものはそれを根拠にカイゼンするのが最も望ましいです。ただ、エビデンスがなくて、ベンチマークの結果のみで判断する場合、確かにリスクが伴うかもしれません。
質問:標準化によって、マニュアル通りのことしかしないことが発展の妨げになる、個別性が高まらないというマイナスにつながるのでは?
渡辺:パスが適用されやすい疾病でも、合併症発症や容態の変化でパスから外れる患者さんは必ずいます。その場合は、パスから外れた治療をすべき。絶対にパスから外れることができないという発想は間違いです。ただし、パスが本来使われるべきケースでパス使用率が低いことがあると、その部分は標準化すべきです。
田中先生:医学という世界では、多くの場合、100%にはなりません。標準はあるものの、標準の周りに分布があって、何割が該当しているかが問題です。
質問:民間病院と公立病院と比較したときに、民間は効率化していく必要があるだろうが、自治体病院では効率化は進みにくいのでは?
渡辺:実は傾向として反対の場合もあるのです。今まで元気だった民間病院というのは、どちらかというと事務部門に優秀な人がいて、医師には「経営はいいですから、臨床だけしてください」と伝えて、うまくいっていました。ところが、DPCに移行して、医療の質を落とさずに、経営を効率化していくことと考えると、医師の関与が必須になります。そのため、医師を巻き込んでいなかった病院では、経営がうまくいかなくなってきています。
田中先生:医師という専門職が病院のメインの仕事を担っている医療現場では、マネジメントレベルで医師が参加していないと病院は変わりません。
また、前半の医療ITに関するディスカッションもおもしろかったです。
主にテーマとなっていたのは、「なぜ、日本で電子カルテが普及しないのか?」「普及するためには、何が必要なのか?」。
「電子カルテが普及している海外では、どこがリードしているんですか?」
「ただ情報を電子で保存するだけでは意味がなく、電子化するということはデータベース化してこそ意味があるのでは?」
「地域でデータベースを共有することを出発点に、電子化の取り組みを始めました」
「院内でもともとのフロー、運用、仕組みが標準化されていなければ、ITの導入は難しい」
「医師に響くような提案の仕方が必要なのでは?たとえば『地域包括ケアシステムに活用できます』など」
などなど、さまざまな意見、質問が飛び交っていました。正しい答えはありませんが、最後に田中先生がまとめてくださったのは、「本質でない問題はさておき、本質的な問題について考えるべき」ということ。パソコンのスキルが低い、入力に手間取って患者さんとのコミュニケーションが希薄になるといったことは、本質的な問題ではありません。教育や運用の仕方によって容易に改善が図れるはずです。本質的な問題は、「電子化する意味は何か?」「電子化することによって社会にどう貢献できるのか?」といったこと。こうしたことを考えていかなければいけないはずです。
広報部 |
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。
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