2010年06月10日
“患者思い”の病院が、なぜつぶれるのか?――メディカルコンソーシアム定例会
8日(火)、NTT東日本関東病院にて、NPOメディカルコンソーシアム主催の定例会が開催され、GHC代表の渡辺が講演をさせていただきました。
今回いただいたテーマは、「“患者思い”の病院が、なぜつぶれるのか?」。
昨年、渡辺が出させていただいた書籍のタイトルです。
講演は、医療は「情報の非対称性」「不確実性」「不可逆性」などの特性をもつため、通常の財やサービスのように市場原理に任せることができず、政府の介入が必要であるという説明で始まりました。さらに経済学からみた医師の役割は、「情報の非対称性」を是正する「代理人(エージェント)機能」である、その機能には倫理観が伴うことをお伝えしました。
さて、本書では、間違った“患者思い”は患者のためにも、病院経営のためにもならない、ということを書かせていただきました。また、医療という公的なサービスゆえに利益を得ることをタブー視する傾向がこれまではありましたが、組織が継続してこそサービスを提供することができるということも、本のなかでお伝えしました。
では、病院のトップは、どういった視点、考え方を持たなければいけないのでしょうか。
講演のなかで提示させていただいたのは、次の5点です。
①経営責任を取る覚悟
②勘ではなく、情報(データ)に基づく経営
③明確なビジョンと戦略の策定
④環境の変化への柔軟な対応
⑤人材を生かす視点(厚い人材配置)
講演の後半では、それぞれの項目について具体例も織り交ぜながら説明させていただきました。
たとえば、②の「勘ではなく、情報(データ)に基づく経営」に関しては、まさに当社がコンサルティングサービスを進めるなかで行っていることです。つまり、「経営と医療の質を可能な限り、可視化し、他と比較する」ということ。
また、3つめの「明確なビジョンと戦略の策定」については、「『自分のやりたいこと』をまず書いてしまうのではなく、自分の立ち位置を知って、周りの状況を把握してからでなければ現実的なビジョンは描けない」ということをお伝えしました。
さらに、最後の「人材を生かす視点」は、今年度の診療報酬改定でまさに重点的に点数が配分されていたことの一つ。呼吸ケアチーム加算、栄養サポートチーム加算などのチーム医療を評価する点数が新設されたことが、顕著な例です。これまで先駆的に厚い人員を配置して、医療の質向上に努めていた病院にとっては、ようやく点数が追いついてきたというわけです。たとえば、長野県の相澤病院(471床)には、リハビリスタッフが160人もいるそうです。
前述した5つの視点、考え方は、いずれも密接にリンクしています。
現実可能なビジョンを描くには、勘ではなくデータに基づいた視点が必要ですし、ビジョンは内部要因のみではなく外部の環境変化に対応していなければいけません。そしてデータにもとづいて、ビジョンに基づいて、外部環境に基づいて、いかに人材を生かすかという考えも必要。さらに、こうしたことを実践していくには、やはりトップが経営責任を取るという覚悟が必要です。
講演の最後には、DRG環境下の米国の事例も少し説明させていただきました。
日本の病院もDPCという環境下、市場を見直し、自院のポジションを改めて把握し、「患者に、職員に、地域の医療機関に、そのほかすべてのステークホルダーに選ばれる病院なのか」、真剣に考える時にきています。
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広報部 |
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事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。
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