GHCブログ

2010年06月16日

医療マネジメント学会ランチョンで、CQI研究会の取り組み紹介

日本医療マネジメント学会総会第1日目に引き続き、2日目もランチョンセミナーを開催いたしました。

「病院の枠を越えたDPCデータの活用」のパート2として、「がん医療の質向上をめざすCQI研究会の試み」をテーマにセミナーを行いました。 座長は、米国グローバルヘルス財団理事長のアキよしかわ。演者は、愛知県がんセンター中央病院病院長の篠田雅幸先生と、グローバルヘルスコンサルティング・ジャパン代表取締役社長の渡辺幸子です。


GHCアキよしかわ

まず、よしかわが、GHCが行っているCSR活動について簡単に説明。GHCでは、各医療機関に対するコンサルティングサービスのほか、自治体病院間でのコンソーシアム、今回のテーマであるCQI研究会などの分析業務の支援も、CSR活動の一環として行っています。 「オリジナル6病院から始まったCQIも今では、大学病院も含め、37のがん拠点病院が参加しています。もしCQIへの参加をご希望、あるいは資料をご希望の方は、info@ghc-j.comまでご連絡下さい」(よしかわ)


篠田先生

次に、篠田先生がCQI(Cancer Quality Initiative)研究会の概要、立ち上げから今までの経緯について説明してくださいました。篠田先生は、CQI研究会の代表世話人です。

CQI研究会では、現在、6つの世話人病院を含め、37病院が、施設名を開示した上で、がん診療の均てん化をめざし、ベンチマーク分析を行っています。篠田先生は、「大きな目標の一つは、がん診療の質向上に利用可能な評価指標を開発すること」とおっしゃいます。

また、CQI研究会の意義として、次の2点を指摘されました。 1つは、「ピアレビュー」という、相互に相互を批判する文化が日本では非常に乏しいこと。 もう1つは、そうしたなかで自分たちの姿勢を正す、大きなインセンティブになるのがデータであり、医師を始めとした医療者は客観的なデータに対しては非常に素直であること。

ベンチマーク分析を通して自院の立ち位置と一般的な状況を理解し、それぞれの病院が院内でフィードバックを行い、質の向上の取り組みをしていくというスパイラルのなかで、参加病院の診療内容は確かに変わってきています。以前はばらつきのあった術前術後日数が標準化されてきていたり、抗生剤の使用日数・銘柄が統一されてきたりと、まさに目標としていた均てん化に一歩ずつ近づいています。

講演の最後、篠田先生は次のように語ってくださいました。

「自分たちの診療の質を検証するのに、DPCデータは極めて重要です。そして、がん登録データやそのほか医療の質の評価などとドッキングすれば、ベンチマークによって日本の医療機関の質を高め、国民により良い医療を提供できるようになります。CQI研究会の取り組みに関心を持たれた方は、ぜひ、お気軽にお声かけください」


GHC渡辺

続いて、渡辺からは、①医療の質向上において、臨床指標はどのような形で使っていけるのか、②患者の視点からは、診療データはどのように活用できるのか――という2点についてお話をさせていただきました。

前半部分では、具体的な事例をふんだんに盛り込みながら、どのような指標を用いてベンチマーク分析を行っているのか、説明させていただきました。ただ、一点、警鐘を鳴らしたのは、「臨床指標にエビデンスがあるかどうか、ガイドラインにエビデンスがあるかどうかの検証が重要である」ということ。ガイドラインに載っているからと、盲目的に信用するのではなく、一方で、エビデンスに基づいているのかとの検証が必要ということをお伝えしました。

そして後半は、患者の視点からの診療情報の活用について言及させていただきました。

ランキング本や雑誌の病院ランキングが頻繁に登場するのは、それだけニーズがあるからですが、では、なぜ、患者は医療に関する情報を欲しているのでしょうか。

渡辺は、①医療者と患者との情報の非対称性、②不確実性、③不可逆性(治療は、失敗すれば元に戻れない)という、医療が持つ3つの特徴を指摘します。

また、医療の質を図る際に、ストラクチャー、プロセス、アウトカムの3つの側面があるといわれますが、このうち、患者さんが把握できるのは、おそらくストラクチャーの情報のみ。プロセスやアウトカムに関する情報は、なかなか得られません。

ただ、日本でも少しずつ情報開示に向けて取り組みが進みつつあり、全国がん(成人病)センター協議会が加盟病院の5年生存率を開示したり、一部の地域で県単位での情報公開が進んだりと、新しい動きが見られています。

渡辺も最後に少し紹介させていただきましたが、GHCも、医療の質向上と情報格差の是正を目的に、患者さんに向けた情報提供サイトを現在、開発中です。正式な発表は7月になりますが、患者さんが自分に合った病院を見つけ出せるような仕組みを思案中です。


2日間に渡って開催させていただいたランチョンセミナーは、両日とも、会場いっぱいに人が集まってくださいました。お集まりくださった方々、本当にありがとうございました。


広報部
広報部

事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。