GHCブログ

2010年06月17日

米国病院の電子カルテ普及率は1.5%――ASCOレポートvol.1

6月4日から8日にかけて、米国臨床腫瘍学会(ASCO)がシカゴで開催されました。世界中からさまざまな立場でがん医療にかかわる人が集まる、世界最大級のがんの学会です。 昨年に引き続き、GHCからは根本が参加いたしました。 今年も、根本の現地直送レポートをお届けします!

ASCO入り口

まずは初日のレポートです。


毎年、初日は教育的セッションがほとんどで、今回も、最新の知見というよりは、昨今の治療法の進展や今後の展望といった内容の講演が多くありました。

このうち、乳がんのアジュバント療法(術後補助療法)に関してと、EHR(Electronic Health Record)の教育セミナーについて報告します。

まず、乳がんアジュバント療法に対しては、再発予防もさることながら、骨メタや骨粗鬆症を予防することにおいて、SERMs(selective estrogen receptor modulator(s), 選択的エストロゲン受容体作動薬)の併用が一般的と考えられるようになったことが大きいと感じました。 日本ではまだAI、TAMといったホルモン剤を単体で使用していますが、予防や副作用の面でSERMsを併用する必要性は高いです。そのため、日本でもSERMsのアジュバント適用が求められます。


続いて、EHRの教育セミナーについて。EHRとは、広義の意味での電子カルテです。 不勉強ながら、米国でのEHRの普及状況についてあまり見識がなく、「日本よりは断然普及しているのだろう」と思い参加したのですが、実は逆でした。むしろ低い普及率が問題となっているそうです。

NEJM 360:1628-1638, 2009に掲載された論文によると、アメリカの急性期病院(回答率63.1%)での普及率は、通常考えられる電子カルテ(記録だけでなく、指示や画像の閲覧まで可能なシステム)を導入している病院はたったの1.5%。オーダリングシステムの導入でさえ17%だったそうです。

対して毎日MMJの2009年10月号に掲載された「医療情報システム開発センター」による日本の調査によれば(回答率22.2%)、電子カルテを導入しているのは21%、オーダリングシステムは43%だったそうです。

ちなみに、アメリカではブッシュ大統領時代の2004年に「10年以内に全国民のHERを構築する」と宣言されています。また、日本では周知の通り、「2006年度までに全国の400床以上の病院および全診療所の6割以上に電子カルテシステムの普及を図る」と、2001年に厚生労働省が発表していました。

また、アメリカでは、診療記録がネットワークで管理できている地域はごくわずかだそうで、医療ミスの防止、医療の質・効率性の向上のためにも積極的に導入していきましょう、という日本と似たような状況が垣間見られました。 ネットワーク化の妨げになっているのも、多種多様なベンダーが乱立していること、共通システムの整備が遅れていることと、日本でいわれていることとほぼ同じのようです。

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広報部
広報部

事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。