GHCブログ

2010年06月29日

病院経営という部分最適から、地域経営という全体最適へ――DPCマネジメント研究会

26日(土)、学術総合センター(東京都千代田区)にて第10回DPCマネジメント研究会学術総会が開催されました。 その内容を2回に分けてご報告します。

真野先生

開会の挨拶を行った多摩大学医療リスクマネジメントセンターの真野俊樹教授は、「今後、病院の方向性を考えると大きく2つあるのではないか」と、①医療を産業として捉えて、海外にも積極的に出て行く病院、②地域に根づいて、地域住民に貢献する病院――という2つのあり方を提示されました。 このうち、前者に関連しては、6月18日に閣議決定された「規制・制度改革に係る対処方針」において、「ライフイノベーション分野」の一つ目の方針として、「保険外併用療養費の拡大」が謳われています。真野先生は、この規制・制度改革に関する分科会のライフイノベーションワーキンググループのメンバーのお一人。 「いわゆる“混合診療”のこと。一定の施設要件を満たした100から200病院は、最新の技術(再生医療を含めた先進的な医療、海外では標準的に使用されながらも日本では未承認・適応外の医薬品を使った医療など)をどんどん取り入れて、混合診療をよしとする流れができつつあります」と、説明されました。


阿南先生

最初の講演は、「包括評価制度(DPC)の最新の動向とデータ活用について~診療情報を管理する立場から~」と題して、独立行政法人国立病院機構九州医療センター・医療情報管理部医療情報管理室長・阿南誠氏から。

阿南氏は、「データの精度が病院によって両極端になっている」ことを指摘し、「.9」「.8」の比率について、全国のDPC病院の状況を紹介されました。 また、講演の後半は、DPCデータを活用して院内で行った改善について説明。 このなかで、「同じ疾患群でも医師によって、(診療内容に)バラツキがあった」ことを紹介。ある症例では、医師によって1日当たり単価が2万円近く異なっており、平均在院日数が短い医師のほうが単価が高かったそうです。調べてみると、休日には平日と同様の入院受け入れが行えないため、外来日と手術日の関係に原因があったことが発覚。休日時間外のパフォーマンスを改善し、大型連休の期間中でも年間2、3日は入院受け入れを平常どおりに実施したところ(その分は代休を活用)、5月の連休・年末年始ともに患者数の激減が緩和され、収益は1日1億円の増加、さらに患者サービスも改善したことを説明されました。


続いて行われたランチョンセミナーでは、明治大学 研究知財戦略機構 社会イノベーション・デザイン研究所副所長の川井真氏が「地域医療とDPC/医療標準化と可視化の先にあるもの」というタイトルで講演されました。

川井氏は、「医療関係者と患者」の情報格差について、「専門情報は素人にはわからないという意味で患者の情報不足がよく指摘されるが、実は患者のことを医療者は意外と知らない。そういう意味では、医療関係者は情報劣位者といえるのでは?」と指摘。そうしたなかで、DPCデータの価値があることを語りました。

そして、DPC病院の役割として指摘されたのが次の三点。 ○医療コストに関する情報発信を担う存在 ○地域における連携の核としての存在 ○医療・介護・福祉の連携において安心を支える存在

講演の最後、川井氏が伝えたメッセージは、「病院経営という部分最適から、地域経営という全体最適へ」ということ。

決して容易ではありませんが、がん診療拠点病院間での「CQI研究会」や、地域の自治体病院間でのコンソーシアムである「ToCoM」、「DoCoM」といった活動を通してGHCとしても考えていることだったので、非常に印象に残りました。


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広報部
広報部

事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。