2010年09月18日
最も重要なのは組織文化の醸成――メイヨー・クリニックの経営管理部門トップが来日講演
16日(木)、名古屋第二日赤病院にて、同院主催、愛知県病院協会とグローバルヘルスコンサルティング・ジャパン後援で、メイヨー・クリニックの名誉最高経営管理責任者のロバート・スモルト氏を招き、講演会を開催しました。
メイヨー・クリニックは言わずと知れた、世界的にも最も著名な病院の1つ。「U.S.News」が毎年発表している「America’s Best Hospitals」では、常に上位に評価され、2010-11 年度版では “Diabetes & Endocrinology” および “Gastroenterology” の 2 部門で 1 位に評価されたほか、他部門でも上位にランキングと、世界各国の多くの医療関係者が憧れている病院です。
そんなメイヨー・クリニックの経営管理部門のトップであったスモルト氏が講演をするとのことで、会場には300名近くの病院経営者、管理者が集まりました。
まず、名古屋第二赤十字病院院長の石川清先生が挨拶。続いて、米国グローバルヘルスコンサルティング会長のアキよしかわがスモルト氏の紹介とともに挨拶をさせていただきました。
スモルト氏の講演のタイトルは、“The Strategic Roles of the Hospital Administrators:the Mayo Stories”(メイヨー・クリニックに学ぶ、病院経営者に必要な戦略的思考とは?)。
日本の病院関係者に向けて、経営者としてどのような視点を持つべきか、何を大切にすべきか、ユーモアも交えながら伝えてくれました。
「患者のニーズを最優先にする」メイヨー・クリニックが、すべての患者に最善の治療を提供するために大事にしているのが、1)インフラの整備、2)工程の管理、3)実践、4)組織文化の醸成――という4つです。
インフラの整備の一例として紹介してくれたのは、「ICUデータマート」。年間1万5,000人以上の重症患者の情報をデータベース化し、「こういった症状になったら危ない」という情報を蓄積。危険な検査結果などを検出するとICUにアラートが入り、適切な治療体制がとられる、という仕組みです。このICUデータマートを導入した結果、院内の死亡率は半分以下に下がり、平均4~5日だったICU在院日数は2日強に短縮されたそうです。
2つ目の工程の管理に関しては、1つの管理システムではなく、Six Sigma(シックスシグマ)やLEAN(リーン)、Deming(デミング)、 Rapid-Cycle、Plan-Do-Study-Act、Juran(ジュラン)など、「良い」と考えられる管理システムを複数導入。また、3つ目の実践に関しては、首脳陣が現場に立つ、プロセス責任者を配置する、有害事象の監視グループを置く、長い目で技術と施設に投資する、そして最も大事な根源の価値を実践するといったことを行っているとのこと。
最後の組織文化として紹介してくれたのは、統合的な医療活動を行う、医師と病院を一体化すること、不適切なインセンティブを制限すること(利益を目的としない、医師を給与制にする…など)といったことでした。
これらをそれぞれ説明した上で、スモルト氏が「この4つのすべてが必要ですが、最も重要なのは何だと思いますか? 組織文化の醸成です」と話すと、会場では多くの方が頷いている様子が見られました。
さらに、質の改善のために病院のリーダー、管理部門ができることとして教えてくださったのは、次の10項目です。
1 信頼のおける優れた人材を見つける
2 「平方根の法則(ルートnの法則)」を認識する
→組織全体で何かを変えたいとき、たとえば100人の組織であれば、100人全体に働きかける必要はなく、少なくとも10人に働きかければ、そこから変化が生まれるということ
3 リーダーシップを可視化する
→経営陣がさまざまな現場を訪れて質の改善を見て回る「医療クオリティ・ラウンド」を行った
4 定期的に取締役会の議題項目にする
5 役員会の議題は、患者の話から始める
6 質の改善に関して、優れた取り組みをしているスタッフを評価する
7 質の改善の文化を築きあげる
8 質の問題点について、定期的に助言をする小グループを、医師とその他スタッフの構成で作る
9 改善目標設定を低く置かない
10 データシステムに投資する→改善業務の結果につながる
そいて講演後、会場から次のような質問があがりました。
「もしもメイヨー・クリニックが今のようなブランドのある病院でなかったら、あなたはどうやって医師を集めますか?」
これに対してスモルト氏は、笑顔を見せた上で次のように答えました。
「メイヨー・クリニックはとうもろこし畑のようなところから始まりました。最初から有名だったわけではありません。ともに手を携え、患者を助けるということを繰り返し実践し、成長してきたのです」
「ローマは1日にしてならず」といいますが、「メイヨーも1日にしてならず」ということですね。
—–
広報部 |
|
事例やコラム、お役立ち資料などのウェブコンテンツのほか、チラシやパンフレットなどを作成。一般紙や専門誌への寄稿、プレスリリース配信、メディア対応、各種イベント運営などを担当する。
|